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2023.1.1
新年のご挨拶
あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します。
令和3年7月1日の独立開業し、丁度、1年半が過ぎました。これもすべて皆様方の支えのおかげと感謝しております。今後とも宜しくお願い致します。
このブログも最新の更新が1年前となってしまい、全く更新できませんでした。正直、仕事をこなすことで精一杯で、ブログを更新する時間をとることができませんでした。昨年1年は、新たなことがいろいろあり、そのことにすべての時間を費やしました。このような状況は、これからも続くのかもしれませんが、やり方や体制を考えながら時間を作り、今年は新たなことに対し効率的に対応できるよう頑張りたいと思っております。このブログも定期的に更新できるよう頑張ります(ちょっと自信がないのですが・・・・(汗))
今年は、新たなお客様と1人でも多くお会いできること願っております。そして1人でも多くのお客様に満足頂けるサービスに努めたいと思っております。
2022.1.8
令和4年税制大綱
こんにちは!!山形市で税理士をしている菖蒲です。
ご無沙汰しておりましたが、今日は、令和4年度の税制大綱についてです。
個人所得課税・資産課税・法人課税・消費課税・納税環境整備・関税について令和3年12月24日に閣議決定されました。
正直、関係のないものもありますので、それについては見出しのみとします。また、具合的なことについては、もう少し後に出ると思いますので、今は、indexとして念頭に置いておいてもらい、関係のある項目については、後日確認しててください。
個人所得課税
○ 住宅ローン控除制度の見直し
・住宅ローン控除の適用期限を4年延長し、令和7年末までの入居者を対象とするとともに、カーボンニュートラルの実現の観点から、省エネ性能等の高い認定住宅等につき、新築住宅等・既存住宅ともに、借入限度額の上乗せを行う。
・控除率を 0.7%とするとともに、所得要件を 2,000 万円とする。
・新築住宅等について控除期間を 13 年とするほか、令和5年以前に建築確認を受けた新築住宅について、合計所得金額 1,000 万円以下の者に限り、40 ㎡以上の住宅を控除対象とする。
資産課税
○ 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の見直し ・格差の固定化防止等の観点を踏まえ、限度額を見直した上で、適用期限を2年 延長する。
○ 登録免許税におけるキャッシュレス納付制度の創設 ・登録免許税をクレジットカード等により納付することを可能とする制度を創設 する。
○ 土地に係る固定資産税等の負担調整措置 ・土地に係る固定資産税等の負担調整措置について、令和4年度に限り、商業地 等に係る課税標準額の上昇幅を、評価額の 2.5%(現行:5%)とする。
法人課税
◎積極的な賃上げ等を促すための措置⇒ニュースで少し前に取り上げられたいました。
- 大企業等
・令和5年度末を期限として、継続雇用者給与等支給額の対前年度増加割合が3%以上である場合に、雇用者給与等支給額の対前年度増加額の 15%の税額控除を行うとともに、継続雇用者給与等支給額の対前年度増加割合が4%以上である場合には、税額控除率に 10%を加算し、教育訓練費の対前年度増加割合が 20%以上である場合には、税額控除率に5%を加算する措置を講ずる。
・令和5年度末を期限として、法人事業税付加価値割において、継続雇用者給与等支給額の対前年度増加割合が3%以上である場合に、雇用者給与等支給額の対前年度増加額を付加価値額から控除する措置を講ずる。
・一定規模以上の大企業に対しては、給与の引上げの方針、取引先との適切な関係の構築の方針等を公表していることを要件とする。
- 中小企業
・雇用者給与等支給額の対前年度増加割合が 1.5%以上である場合に、雇用者給与等支給額の対前年度増加額の 15%の税額控除を行うとともに、税額控除の上乗せ措置として、雇用者給与等支給額の対前年度増加割合が 2.5%以上である場合には、税額控除率に 15%を加算し、教育訓練費の対前年度増加割合が 10%以上である場合には、税額控除率に 10%を加算する措置を講ずる。
○ オープンイノベーション促進税制の拡充
○ 5G導入促進税制の見直し
○ 大法人に対する法人事業税所得割の軽減税率の見直し
・外形標準課税対象法人(資本金1億円超の法人)の年 800 万円以下の所得に係る軽減税率を廃止し、標準税率を 1.0%とする。
○ ガス供給業に係る法人事業税の課税方式の見直し
消費課税
○ 自動車重量税におけるキャッシュレス納付制度の創設
○ 航空機燃料税の税率の見直し
○ 沖縄県産酒類に係る酒税の軽減措置の段階的廃止等
納税環境の整備
○ 税理士制度の見直し
○ 記帳義務を適正に履行しない納税者等への対応
・記帳義務を適正に履行しない納税者への過少申告加算税等の加重措置を整備する。
・証拠書類のない簿外経費についての必要経費・損金不算入措置を創設する。
○ 財産債務調書制度の見直し
・提出期限を後倒しするなど提出義務者の事務負担の軽減を図るとともに、適正な課税を確保する観点から、現行の提出義務者に加えて、特に高額な資産保有者については所得基準によらずに本調書の提出義務者とする措置を講ずる。
○ 地方税務手続のデジタル化
・ eLTAX(地方税のオンライン手続のためのシステム)を通じた電子申告・申請の対象手続や電子納付の対象税目・納付手段を拡大する。
関税
○ 暫定税率等の適用期限の延長等
○ 海外の事業者を仕出人とする模倣品の水際取締りの強化
2021,10.04
令和3年分の年末調整
こんにちは!!山形市で税理士をしている菖蒲です。
今回は、ちょっと早いですが!!令和3年分の年末調整について、国税庁の特設ページが開設されましたので、その改正点の概要を記載します。ただし、今回は、そんなに大きな改正点はないので、令和2年度の年末調整の仕方について再度見直してもらえるといいかも・・・
令和3年度改正点
改正点は、次の通りです。
(1) 税務関係書類への押印
(2) 源泉徴収関係書類の電磁的提供
(3) e-taxによる申請等の拡充
令和3年度改正点の内容
(1) 税務関係書類への押印
税務署長等に提出する源泉所得税関係書類について、押印を要しないこととされま
した。このため、扶養控除等申告書などの年末調整の際に使用する書類について
も、従業員等の押印は不要
(2) 源泉徴収関係書類の電磁的提供
従業員から扶養控除等申告書などを電子データで提供を受ける場合、従来は、税務
署に申請書を提出して承認を受ける必要があったが、この承認が不要となった。
ただし、この場合の要件と電子データで提供を受けることができる書類は、次の通
りです。
① 要件
給与支払者は、次の要件のすべてを満たすこと!!
イ、 電磁的方法による提供を適正に受けることができる措置を講じていること
ロ、 提供を受けた記載事項について、その提供をした給与等の支払を受ける者を特
定するための必要な措置を講じていること
ハ、 提供を受けた記載事項について、電子計算機の映像面への表示及び書面への出
力をするための必要な措置を講じていること
② 書類の範囲
イ、 給与所得者の扶養控除等申告書
ロ、 従たる給与についての扶養控除等申告書
ハ、 給与所得者の配偶者控除等申告書
ニ、 給与所得者の基礎控除申告書
ホ、 給与所得者の保険料控除申告書
ヘ、 給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書
ト、 所得金額調整控除申告書
チ、 退職所得の受給に関する申告書
リ、 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書
(3)e-taxによる申請等の拡充
税務署長等に対する申請等のうち e-Tax により送信することができないものについ
て、書面による提出に代えて、スキャナにより読み取る方法等により作成した電磁的
記録(いわゆる「イメージデータ」)を送信することにより行うことができることと
された。
令和2年度の改正点(参考)
(1) 給与所得控除の改正
(2) 基礎控除の改正
(3) 寡婦控除の改正
(4) ひとり親控除の創設
(5) 所得金額調整控除の創設
など
忘れている方は、再度、確認してください!!
まとめ
令和3年度の年末調整については、大きな改正点はありませんが、令和2年度に大きく変わりましたので、再度確認してみてください。
また、年末調整は、その計算も大変ですが、それと同じくらい、従業員から書類を集めてチェックすることが大変です!!まだ、年末調整までは時間がありますが、そろそろ段取りを確認し、従業員から書類をどう集めるかの検討を始めた方が良いと思います!!今回の改正では、電磁的記録による従業員からの提供について、税務署の承認が不要とされたため、この方法を検討されるのも一つですね!!何だか面倒なような気もしますが、やってみると案外楽な会社もあると思います!!
大きな改正点はないとしても、間違わないようにお互い頑張りましょう!!
2021,09.27
圧縮記帳
こんにちは!!山形市で税理士をしている菖蒲です。
今回は、事業再構築補助金について圧縮記帳の適用が可能である旨の国税庁からの回答があったため圧縮記帳について記載したいと思います。
圧縮記帳の概要
会計上固定資産を取得した場合には、通常その取得価額(買った金額)によって資産に計上します。この固定資産の購入にあたって、例えば、補助金を申請し、補助金をもらい、その補助金で固定資産を購入した場合でも、原則として、当該購入資産は取得価額によって資産に計上し、補助金は、雑収入などで処理します。その結果、雑収入で処理された補助金については収益であるため、これに対して税金が課されることとなり、資産を購入するためにもらった補助金のうち、一部は税金の支払いに充てられ、残りの金額が固定資産の購入に充てられることとなる。こうなると、何のために補助金をもらったのかということとなるため、この補助金に対して課される税金を繰延べることによって、固定資産の購入時点でもたった補助金全額を固定資産の購入資金に充てられるようにするために設けられた制度が圧縮記帳です。
圧縮記帳の仕組み
例えば、購入資産120万円、耐用年数3年、定額法、補助金60万円、毎月の売上100万円、法人税率30%の場合
【通常の仕訳】
1、1年目
① 購入時 (固定資産)/(現金預金)120万円
② 補助金受領時 (現金預金)/(雑収入) 60万円
③ 決算時 (減価償却費)/(固定資産)40万円
④ 税額 (売上100万円+雑収入60万円-減価償却費40万円)×30%=36万円
2、 2年目
① 決算時 (減価償却費)/(固定資産)40万円
② 税額 (売上100万円-減価償却費40万円)×30%=18万円
3、3年目
① 決算時 (減価償却費)/(固定資産)40万円
② 税額 (売上100万円-減価償却費40万円)×30%=18万円
4、3年間の税額の合計
36万円+18万円+18万円=72万円
【圧縮記帳の仕訳】
1、1年目
① 購入時 (固定資産)/(現金預金)120万円
② 補助金受領時 (現金預金)/(雑収入) 60万円
③ 決算時 (固定資産圧縮損)/(固定資産)60万円
(減価償却費)/(固定資産)20万円
④ 税額 (売上100万円+雑収入60万円-固定資産圧縮損60万円―減価償却費
20万円)×30%=24万円
2、 2年目
① 決算時 (減価償却費)/(固定資産)20万円
② 税額 (売上100万円-減価償却費20万円)×30%=24万円
3、3年目
① 決算時 (減価償却費)/(固定資産)20万円
② 税額 (売上100万円-減価償却費40万円)×30%=24万円
4、3年間の税額の合計
24万円+24万円+24万円=72万円
比較すると、各年の税額は異なりますが3年間の合計で見ると同じになります。ただ、1年目の税額が通常の場合の方が圧縮記帳を適用した場合より少なくなるため課税の繰り延べと言われています。つまり、税の負担はいずれを選択しても変わらないということです。
圧縮記帳が適用される場合
(1) 国庫補助金等の圧縮記帳
(2) 保険差益の圧縮記帳
(3) 交換の圧縮記帳
(4) 特定資産の買い換えの圧縮記帳
(5) 収容等の圧縮記帳
(6) 換地処分等の圧縮記帳
(7) 土地等の先行取得の圧縮記帳
など
処理方法
処理方法は、次の方法があります。
(1) 帳簿価額を損金経理により減額する方法(直接減額方式)
(2) 確定した決算において積立金として処理する方法(積立金方式)
会計的な考え方
圧縮記帳は、あくまで課税を繰り延べるための方法であり税法の規定です。そのため、会計的には本来認めたくない制度です。つまり、その理由の1つは、固定資産の帳簿価額は、取得価額であるべきであり、その取得価額を基にして減価償却を計算する圧縮記帳は、固定資産のB/S価額を歪めるとともに減価償却費をも歪めてしまうからです(上記の「圧縮記帳の仕組み」で記載した方法)
しかし、税法上認められている制度を会計上認めないとすると混乱するため、会計上も認めることとしていますが、ただ、処理方法として、原則として、直接減額方式ではなく、積立金方式を採用することを条件に認めています。
積立金方式の仕組み
例えば、購入資産120万円、耐用年数3年、定額法、補助金60万円、毎月の売上100万円、法人税率30%の場合
1、1年目
① 購入時 (固定資産)/(現金預金)120万円
② 補助金受領時 (現金預金)/(雑収入) 60万円
③ 決算時 (減価償却費)/(固定資産)40万円
(圧縮積立金積立)/(圧縮積立金)60万円
(圧縮積立金)/(圧縮積立金取崩)20万円
④ 税額 (売上100万円+雑収入60万円-圧縮積立金60万円+圧縮積立金取崩20万
円―減価償却費40万円)×30%=24万円
2、 2年目
① 決算時 (減価償却費)/(固定資産)40万円
(圧縮積立金)/(圧縮積立金取崩)20万円
② 税額 (売上100万円+圧縮積立金取崩20万円-減価償却費40万円)×30%
=24万円
3、3年目
① 決算時 (減価償却費)/(固定資産)40万円
(圧縮積立金)/(圧縮積立金取崩)20万円
② 税額 (売上100万円+圧縮積立金取崩20万円-減価償却費40万円)×30%
=24万円
4、3年間の税額の合計
36万円+18万円+18万円=72万円
複雑ですかね??処理方法は、申告調整も含まれるのでピンと来ないかもしれませんが、ただ、結論だけ見てみてください。
① 税額は、圧縮記帳(直接減額方式)を適用した場合と同じ
② 利益は、圧縮記帳を適用しない場合と同じ
上記①により税務上のメリットを生かせ、上記②で会計上の要請を満たすということです。
圧縮記帳のメリット・デメリット
(1) メリット
圧縮記帳することで収益金に課せられる税金を単年度で負担することがなくなり、
固定資産を取得した年の税負担を軽減できることです。単年で多くの納税をしなくてよ
いので、目的の資産を取得する資金を準備しやすくなり、資金繰りの負担も少なくなり
ます。
(2) デメリット
翌年以降の税金が増加することです。圧縮記帳した部分にかかる税金は減税されたわ
けではなく税効果の対象となり、複数年に分割して納付します。
圧縮記帳の要件
圧縮記帳を適用するためには要件がありますので、十分に検討した上で適用してください。
まとめ
圧縮記帳は、上記に記載した通り課税の繰り延べであるため、税金が安くなるわけではありません。一方、圧縮記帳が認められるものには、税額控除が認められているものが多く、どちらかの選択適用となります。税額控除は、税金が安くなるものであり、税額の繰り延べである圧縮記帳とは違います。どちらを選択するかは、その時の状況に応じて異なりますが、個人的には、税金が安くなる税額控除の方が良いのかな???と思っています。
また、処理方法として直接減額方式と積立金方式がありますが、処理が簡単なのは直接減額方式です。ただ、本来、会計的には積立金方式の適用を要請していること及び上記の記載をよく見て頂くとわかる通り、初年度の利益が積立金方式の方が直接減額方式よりも大きくなります。
いずれの方法も合法的であり、選択適用であることから、どの方法を選択するかは自由ですので、十分に検討して適用を考えてみてください。
また、このようなことがあった場合には、顧問税理士等にどの方法が御社にとって良いのかを聞いてみるのも良いですね。
2021,09.15
相続対策の留意点
こんにちは!!山形市で税理士をしている菖蒲です。
今回は、相続対策の留意点について記載したいと思います。
令和3年税制改正大綱で『相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、本格的な検討を進める』と盛り込まれました。現行制度の下、生前に財産を移転する方法として大きく2つ(特殊なものは除きます)、暦年贈与と相続時精算課税がありますが、近い将来、この暦年贈与ができなくなる可能性があります。
暦年贈与
誰かから財産をもらった場合には、もらった人は贈与税を払わなければなりません。贈与税の計算は、1年間(1月1日から12月31日まで)にもらった金額の合計額から基礎控除110万円を控除した残りの金額に税率を乗じて計算します。つまり、年間110万円以内であれば贈与税がかからず、申告も不要です。
そのため、例えば、毎年110万円ずつ財産を親から子にあげれば、税金がかからず、これを10年行えば、10年間で1,100万円を税金がかからずにあげることができるといことです。
相続時精算課税(いわゆる生前贈与)
相続時精算課税制度では、2500万円まで贈与税がかからずに財産を贈与することができます。
ただし、この制度は、贈与者(あげる人)は60歳以上の父母・祖父母、受贈者(もらう人)は20歳以上で贈与者の直系の子や孫という条件を満たす必要があります。
そして、ザクっと言えば、相続が発生した場合には、いわゆる生前贈与した財産を相続財産に一度プラスして相続税を計算することになります。
ただ、実は使い勝手が良いわけでもありません!!正直!!
改正の動き
現行制度においては、同額の財産を譲り受けた場合、相続と贈与とで税金が大きく異なります。そのため、改正の動きがみられるようになったものと考えられます。
相続と贈与の場合の税額の違い
例えば、父と息子だけだと仮定します。父の財産は5000万円。これを息子に移そうとした場合、暦年贈与と相続で次のような違いがあります。(1) 暦年贈与で110万円ずつ10年間で財産を移転した後、相続が発生し
した場合
① 年間の贈与額 110万円
② 年間の贈与税 (110万円―110万円)×10%=0円
③ 20年分の贈与税額 0円×20年=0円
④ 相続税 (5000万円―110万円×20年―600万円―3000万
円)×10%=30万円
(2) 相続の場合
① 課税標準 5000万円―600万―3000万円=1400万
② 相続税 1400万円×15%-50万円=160万円
上記のように暦年贈与をした後、相続が発生すれば、相続税額は30万円で済むのに対し、暦年贈与をせずに相続が発生した場合には160万円の相続税が生ずることとなる。
考えられる改正
将来の改正であるため、どのようになるかはわかりませんが、動きとしては、相続時精算課税と同様、暦年贈与した分を相続が発生した場合、相続財産にプラスし、相続税を計算することが考えられます。
つまり、上記の例による場合
(1) 暦年贈与で110万円ずつ10年間で財産を移転した後、相続があった
た場合
① 年間の贈与額 110万円
② 年間の贈与税 (110万円―110万円)×10%=0円
③ 20年分の贈与税額 0円×20年=0円
④ 相続税 (5000万円―110万円×20年+110万円×20年―
600万円―3000万円)×15%-50万円=160万円
贈与はなかったことになる!!
(2) 相続の場合
① 課税標準 5000万円―600万―3000万円=1400万
② 相続税 1400万円×15%-50万円=160万円
上記(1)(2)で同じになる!!つまり、暦年贈与は意味がない!!
まとめ
今回は、将来改正されるだろう相続税・贈与税について記載しました。今まで、相続対策として暦年贈与を使ってきましたが、今後は使えなくなる可能性があります。そのため、今まで暦年贈与で対策をしてきた方は、対策を見直す必要があるかもしれません。これから相続対策をする方は、この改正の動きを見ながら考える必要はあると思われます。
身近な専門家に確認しながら検討してみてください。
2021,09.13
消費税適格請求書等保存制度(インボイス制度)(その5)
こんにちは!!山形市で税理士をしている菖蒲です。
今回は、消費税の適格請求書等保存制度(以下「インボイス制度」という)の導入にあたり、仕入税額控除の要件(買手側の留意点)と経過措置について記載します。
仕入税額控除の要件
インボイス制度においては、適格請求書等の請求書等の交付を受けることが困難な一定の場合を除き、一定の事項を記載した帳簿及び請求等の保存が仕入税額控除の要件です。
【要件】
(1) 帳簿・・・・・一定の事項が記載された帳簿の保存
(基本的には、 今までと同じ!!)
(2) 請求書等・・適格請求書(いわゆるインボイス)等の保存
(注)
適格請求書等保存方式の導入前において、仕入先から交付された請求書等に一定の事項の記載がないときは、これらの項目に限って、交付を受けた事業者自らが、その取引事実に基づき追記することができますが、適格請求書等保存方式の導入後は、このような追記をすることはできません。
仕入明細書等による対応が可能
適格請求書等保存方式においても、買手が作成する一定の事項が記載された仕入明細書等を保存することにより仕入税額控除の適用を受けることができます。
その場合、記載する登録番号は課税仕入れの相手方(売手)のものとなる点や、課税仕入れの相手方(売手)の確認を受けたものに限られる点に留意が必要です
課税期間の末日までに支払対価の額が確定しないとき
【導入前の取り扱い】
例えば水道光熱費などは、適正に対価の額を見積もることにより課税仕入行うことが認められています。
【導入後の取り扱い】
次の①又は②のとおりとなります。
なお、以下の①又は②のいずれの場合も、その後確定した対価の額が見積額と異なるときは、その差額は、確定した日の属する課税期間で処理が必要です。
① 見積額が記載された適格請求書の交付を受ける場合
取引の相手方から見積額が記載された適格請求書の交付を受ける場合、これを保存することで見積額による仕入税額控除が認められます。(注1)➩ありますかね??
その後、確定額が記載された適格請求書交付を受け、保存する必要!
② 見積額が記載された適格請求書の交付を受けられない場合
見積額が記載された適格請求書の交付を受けられない場合、継続して行われる取引(注2)については、金額が確定したときに交付される適格請求書を保存することを条件として、適正に見積もった金額で、仕入税額控除を行うこととして差し支えない。➩これが現実的かな??
注1;見積額を記載した仕入明細書を自ら作成し、相手方の確認を受けた 場合は、これを保存することで見積額による仕入税額控除が認められます。
注2;例えば、機械等の保守点検、弁護士顧問契約のように契約等に基づき継続的に行われ、金額が確定した際に適格請求書の交付を受ける蓋然性の高い取引がこれに該当します。
帳簿のみの保存で仕入税額控除ができる場合
請求書等の交付が受けられない場合には、帳簿のみの保存でOKです。
例えば、
(1) 公共交通機関の切符等で3万円未満のもの
(2) 自動販売機等によるもので3万円未満のもの
(3) 郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたも の)
(4) その一定のもの
簡易課税を適用している場合
適格請求書等の保存は、必要ありません。
免税事業者から仕入れた場合の経過措置
前々から記載してきましたが、インボイス制度の導入後は、免税事業者から仕入れた場合に支払った消費税は、控除することができません。
ただし、制度導入後6年間は、経過措置が設けられています。
なお、この経過措置による仕入税額控除の適用に当たっては、免税事業者等からも課税事業者からと同様の請求書の交付を受けた請求書等を保存し、かつ、この経過措置の適用を受ける旨を記載した帳簿の保存が必要です。
つまり、免税事業者であっても発行する請求書に注意が必要です。
【経過措置】
(1) 令和5年10月1日から令和8年9月30日までは、支払った消費税の
80%相当額の控除
(2) 令和8年10月1日から令和11年9月30日までは、支払った消費税の
50%相当額の控除
まとめ
今回は、仕入税額控除を受けるための買手側の留意点について記載しました。
基本的には、今までと変わりはないですが、保存する書類に注意です!!
また、消費税は、預かった消費税に対する規定は、それほど厳しくありませんが、支払った消費税については、控除するものであるため、厳しい取り扱いとなっていますので、現行の制度上、必要とされている要件を再度確認の上、このインボイス制度による追加になった点を確認してみてください。
案外、今もその要件を満たしていないかも!!
それにしても、経過措置の期間が6年と長いですよね!!
とにかく、最近の税制は、複雑怪奇なものが多いような気がします!!
もう少しシンプルにお願いできれば有難いです!!
これまで5回にわたってインボイス制度について記載してきましたが、実は、これからが本番です!!この制度をそのまま適用してください!!というのは簡単ですが!それではいろいろな意味で不利益を被る小規模事業者が出てくると思われます。そのため、この制度を十分に理解した上で、それぞれのお客さんに個別具体的に説明し、状況を把握した上で、どのように対応していくかを一緒になって考えていきたいと思います!!
2021,09.10
消費税適格請求書等保存制度(インボイス制度)(その4)
こんにちは!!山形市で税理士をしている菖蒲です。
今回は、消費税の適格請求書等保存制度(以下「インボイス制度」という)の導入にあたり、適格請求書発行事業者の義務等(売手側の留意点)について記載します。
適格請求書とは
適格請求書とは、次の事項が記載されている書類を言います。一般的には、現在、取引先ごとに発行している請求書等に次の事項を記載して!!ということです。
① 適格請求書発行業者の氏名又は名称及び登録番号
② 取引年月日
③ 取引内容
④ 税率ごとに区分して合計した税抜又は税込の対価の額及び適用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等(端数処理は、1請求書当たり、税率ごとに1回)
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
上記①から⑥の青色のマーカー部分が、今回追加になったところ!!
適格簡易請求書とは
適格簡易請求書とは、次の事項が記載されている書類を言います。一般的には、スーパーのレシート等、不特定多数の者に対して販売等を行う小売業、飲食店業、タクシー業等の取引について、交付されるもの
① 適格請求書発行業者の氏名又は名称及び登録番号
② 取引年月日
③ 取引内容
④ 税率ごとに区分して合計した税抜又は税込の対価の額
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等(端数処理は、1請求書当たり、税率ごとに1回)又は適用税率
上記①から⑤の青色のマーカー部分が、今回追加になったところ!!
適格請求書及び適格簡易請求書の様式
適格請求書及び適格簡易請求書の様式は、法律などで定めがありません。なので、現在使用している請求書等に上記の追加された事項を記載されていればOKということです。ただし、適格簡易請求書については、レジシステムの変更が必要かもしれません!!
具体的な記載例については、国税庁のHPなどで確認してください。
適格請求書等に記載する消費税額等の端数処理
適格請求書等に記載する消費税額等の端数処理は、1請求書当たり、税率ごとに1回です。ただし、端数の切上、切捨、四捨五入は任意です。
具体的には
① 請求書に記載された税率10%の商品の税込金額の合計が60,000万円の場合
60,000円×10÷110=5,454円
② 請求書に記載された税率8%の商品の税込金額の合計が40,000万円の場合
40,000円×8÷108=2,962円
【これはダメ!!】
① 請求書に記載されている税率10%のA商品の税込金額が30,000円、B商品の税込金額が20,000円、C商品の税込金額が10,000円の場合
30,000円×10÷110+20,000円×10÷110+10,000円×10÷110⇒この計算はダメ!!
② 8%の場合も同様
交付した適格請求書等に誤りがあった場合
適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書(適格簡易請求書、適格返還請求書を含みます。)に誤りがあった場合には、修正した適格請求書を交付しなければなりません。
修正した適格請求書の交付方法については、例えば、次の①又は②のいずれの方法によることも可能です。
① 誤りがあった事項を訂正の上、改めて記載事項の全てを記載した書類を交付する方法(出し直し)
③ 当初に交付した適格請求書との関連性を明らかにしたうえで、修正した事項を明示した書類を交付する方法
*書き方の例については、国税庁HPを確認してください。
出し直しの方が簡単でしょうか???
複数の書類又は電磁的記録による対応
適格請求書とは、一定の事項が記載された請求書、納品書その他これらに類するものをいいますが、一の書類又は電磁的記録のみで全ての記載事項を満たす必要はありません。
つまり、納品書と請求書があった場合、2つ合わせて記載事項が満たしていればOKということです。
適格返還請求書の交付義務及び記載事項
適格請求書発行業者は、返品を受けた場合又は値引きをした場合には、適格返還請求書を交付する義務が課されます。
適格返還請求書とは、次の事項が記載されている書類を言います。
① 適格返還請求書発行業者の氏名又は名称及び登録番号
② 返品を受け又は値引きをした年月日
③ 返品又は値引きの内容
④ 税率ごとに区分して合計した税抜又は税込の対価の額の合計額
⑤ 返品を受け又は値引きをした金額に係る消費税額等及び適用税率
上記①から⑤の青色のマーカー部分が、今回追加になったところ!!
適格請求書と適格返還請求書を一の書類で交付する場合
原則として、商品等を売上げた場合には、適格請求書を交付しなければならず、返品を受け又は値引きをした場合には、適格返還請求書を交付しなければならない。
ただし、適格請求書と適格返還請求書に記載しなければならない事項を1つの書類に記載して交付することが可能です。
これは、検討の余地があります!! 国税庁のHPを参考にしながら検討しましょう!
適格請求書発行業者(売手側)の義務
適格請求書発行事業者には、次の①から④の義務が課されます。
① 適格請求書を交付又は適格請求書に係る電磁的記録を提供する義務
(適格請求書を交付することが困難な一定の場合を除きます。)
② 適格返還請求書の交付又は適格返還請求書に係る電磁的記録を提供する義務
③ 修正した適格請求書の交付又は修正した適格請求書に係る電磁的記録を提供する義 務
④ 上記①から③の書類の写し又は電磁的記録を保存する義務
(注) 「上記①から③の書類の写し」とは、交付した書類そのものを複写したものに限らず、例えば、適格簡易請求書に係るレジのジャーナルなど、その適格請求書等の記載事項が確認できる程度の記載がされているものもこれに含まれます
つまり
・適格請求書を相手方(買手)に提供しないと、買手側が処理できないので、売手側には、必ず渡してね!!ということ。
・その渡した適格請求書の写しを保存しておいてね!!ということ
適格請求書の交付義務の免除
適格請求書を交付することが困難な以下の取引は、適格請求書の交付義務が免除されます。
① 公共交通機関である船舶、バス又は鉄道による旅客の運送(3万円未満のものに限ります※。)
② 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の譲渡(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります。)
③ 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の譲渡(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
④ 自動販売機・自動サービス機により行われる課税資産の譲渡等(3万円未満のものに限ります。)
⑤ 郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。
【国税庁資料より】
適格請求書の交付方法の特例
委託販売の場合には、特例があるので注意してください!!
まとめ
今回は、適格請求書発行事業者の義務等(売手側の留意点)について記載しました。書いてあることは複雑に感じますが、今まで行ってきたことに少し追加すれば、そんなに大変ではないかと思いますので、早めに現状を把握した上で検討してみてください!!
ただ、システムの入れ替えなどが必要な場合には、お金がかかるので大変です!!
また、そんなに大変でもないと書いてしまいましたが、やってみると大変だったりするかもしれないので、その時はゴメンナサイ!!
次回は、買手側の留意点について記載します。
2021,09.08
消費税適格請求書等保存制度(インボイス制度)(その3)
こんにちは!!山形市で税理士をしている菖蒲です。
今回は、消費税の適格請求書等保存制度(以下「インボイス制度」という)の導入にあたり、令和3年10月1日に迫った「適格請求書発行事業者」の登録について記載します。ただ、インボイス制度の導入は、令和5年10月1日からです。
適格請求書発行事業者の登録
消費税のインボイス制度は、ザクっと言えば、免税事業者に支払った消費税を引いてはダメというものです。ちゃんと言えば、適格請求書等保存では、「帳簿」及び税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」(いわゆるインボイス)などの請求書等の保存が仕入れ税額控除の要件となります。
そのため、適格請求書発行事業者が誰であるかを把握するため、令和3年10月1日から「適格請求書発行事業者」の登録が始まるのです。(適格請求書等については、後日)
適格請求書発行事業者登録制度(登録の仕方)
① 登録申請手続(税務署への提出)・・e-TaxでOK
⇓
② 税務署による審査
⇓
③ 税務署による登録及び公表・登録簿への登載
⇓
④ 税務署からの通知(事業者は、一定の事項をインターネットで確認できます)
登録申請のスケジュール
登録申請手続は、令和3年 10 月1日から行うことができます。適格請求書等保存方式が導入される令和5年10 月1日から登録を受けるためには、原則として、令和5年3月 31 日までに登録申請手続を行う必要があります。
適格請求書発行事業者の登録を受けた後の留意点
(1) 適格請求書発行事業者の登録を受けた者が、2年前の課税売上高が、1,000万円以下となった場合には、本来は、免税事業者(消費税の申告をしなくていい人)になりますが、適格請求書発行事業者の登録をやめる手続きをしない限り、免税事業者にはなれない。 ⇒危ない!!
*「消費税課税事業者選択届出書」を提出した事業者が、免税事業者に戻るためには「消費税課税事業者選択不適用届出書」の提出も必要⇒危ない!!
(2) 公表事項に変更が生じた場合や、登録を失効させる場合には、一定の手続が必要
適格請求書発行事業者の取りやめ及び失効
(1) 取りやめする場合
適格請求書発行事業者は、税務署長に「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」(登録取消届出書)を提出することにより、原則として、登録取消届出書を提出した翌課税期間の初日に、適格請求書発行事業者の登録の効力を失わせることができます。
(注) 登録取消届出書を提出した日の属する課税期間の末日から起算して 30 日前の日から、その課税期間の末日までの間に提出した場合、その提出があった日の属する課税期間の翌々課税期間の初日に登録の効力が失われます。
⇧
これ危ない!!(なんでこんな書き方なのかな??)
つまり、3月決算法人が4月から取りやめするためには、3月31日までに提出すれば良いのではなく、2月28日まで提出しないとダメ!! 3月1日から3月31日までの間に出したら、翌年の4月からの適用!!
まとめ
インボイス方式の適用が、令和5年10月1日からですが、その準備として、令和3年10月1日から適格請求書発行事業者の登録が始まります!!
この登録するにあたっては、特に免税事業者については、十分に検討した上で行いましょう!! また、課税事業者であっても制度の全体像を把握した上で、準備を進めながら登録を進めましょう!!
次回は、適格請求書等について書きたいと思います
2021,09.06
消費税適格請求書等保存制度(インボイス制度)(その2)
こんにちは!!山形市で税理士をしている菖蒲です。
今回は、消費税の適格請求書等保存制度(インボイス制度)についてです。この制度は、2023年(令和5年)10月1日から開始されます。2年後からのスタートですが、いろいろ悩ましい部分があるので、早めに対応しておいた方が良いと思います。
そこで今回は、前回と重複するところもあるかもしれませんが、制度の概要からです。
現在の消費税制度の概要
国内において事業として対価を得て資産の譲渡等を行う法人又は個人(ザクっと言えば、事業を行う法人又は個人)のうち、2年前の売上が1000万円を超えるものは、原則として消費税の納税義務(税務署に消費税の申告をし、納付する義務)があります。この人を課税事業者といいます。逆に2年前の売上が1000万円以下であれば、納税義務はありません。この人を免税事業者といいます。課税事業者は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いた金額を税務署に納めることとなります。イメージとしては、次の通りです。
ケース1;課税事業者が課税事業者から商品を仕入れて販売する法人又は個人の場合
・商品を税込110円で仕入れ、税込220円で売ったとき
① 商品を仕入れた際、仕入業者に対し、商品代金100円とそれに対する消費税10円を支払 う。この消費税10円が支払った消費税です。
② 商品を売り上げた際、得意先から商品代金200円とそれに対する消費税20円をもらう。この20円が預かった消費税です。
③ 預かった消費税20円―支払った消費税10円=納める消費税10円となります。
ケース2;課税事業者が免税事業者から商品を仕入れて販売する法人又は 個人の場合
① 商品を仕入れた際、仕入業者に対し、商品代金100円とそれに対する消費税10円を支払う。この消費税10円が支払った消費税です。
② 商品を売り上げた際、得意先から商品代金200円とそれに対する消費税20円をもらう。こ の20円が預かった消費税です。
③ 預かった消費税20円―支払った消費税10円=納める消費税10円となります。
ケース3;免税事業者が課税事業者から商品を仕入れて販売する法人又は個人の場合
・商品を税込110円で仕入れ、税込220円で売ったとき
① 商品を仕入れた際、仕入業者に対し、商品代金100円とそれに対する消費税10円を支払う。この消費税10円が支払った消費税です。
② 商品を売り上げた際、得意先から商品代金200円とそれに対する消費税20円をもらう。この20円が預かった消費税です。
③ 預かった消費税20円―支払った消費税10円=納める消費税10円となりますが、免税事業者は納税義務がないので、納める税金10円は税務署に納めません。
ケース4;免税事業者が免税事業者から商品を仕入れて販売する法人又は個人の場合】
・商品を税込110円で仕入れ、税込220円で売ったとき
① 商品を仕入れた際、仕入業者に対し、商品代金100円とそれに対する消費税10円を支払う。この消費税10円が支払った消費税です。
② 商品を売り上げた際、得意先から商品代金200円とそれに対する消費税20円をもらう。この20円が預かった消費税です。
③ 預かった消費税20円―支払った消費税10円=納める消費税10円となりますが、免税事業者は納税義務がないので、納める税金10円は税務署に納めません。
現在の消費税制度の問題点
前述の例で言えば、課税事業者の場合、納めるべき税金10円は税務署に納めているので手元に残らないが、免税事業者の場合、納めるべき税金10円は税務署に納める必要がないため、その分、手元に残ることとなります。これが今まで問題視されてきました。ただ、免税事業者のこの10円は利益になっているため、これに法人税や所得税が掛かっています。
また、前述のように免税事業者に対し消費税を納めていないので消費税を払わないという人もいました。
消費税のインボイス制度の概要
前述の問題点を踏まえ、消費税のインボイス制度が導入されることとなりました。この制度は、ザクっと言えば、免税事業者に支払った消費税を引いてはダメというものです。具体的には次のようになります。
(1) 課税事業者か免税事業者かを分かるようにする。
(2) 課税事業者には番号を与える。
(3) 請求書等の記載要件を明確にして、かつ、上記(2)の番号を記載する。免税事業者 は、番号が与えられないので記載できない。
ケース1;課税事業者が課税事業者から商品を仕入れて販売する法人又は個人の場合
・商品を税込110円で仕入れ、税込220円で売ったとき
① 商品を仕入れた際、仕入業者に対し、商品代金100円とそれに対する消費税10円を支払う。この消費税10円が支払った消費税です。
② 商品を売り上げた際、得意先から商品代金200円とそれに対する消費税20円をもらう。この20円が預かった消費税です。
③ 預かった消費税20円―支払った消費税10円=納める消費税10円となります。
これは、今までと同じ!!
ケース2;課税事業者が免税事業者から商品を仕入れて販売する法人又は個人
① 商品を仕入れた際、仕入業者に対し、商品代金100円とそれに対する消費税10円を支払う。この消費税10円が支払った消費税です。
② 商品を売り上げた際、得意先から商品代金200円とそれに対する消費税20円をもらう。この20円が預かった消費税です。
③ 預かった消費税20円―支払った消費税0=納める消費税20円となります。
これは、免税事業者に支払った消費税10円は引いてダメ!!
ケース3;免税事業者が課税事業者から商品を仕入れて販売する法人又は個人の場合】
・商品を税込110円で仕入れ、税込220円で売ったとき
① 商品を仕入れた際、仕入業者に対し、商品代金100円とそれに対する消費税10円を支払う。この消費税10円が支払った消費税です。
② 商品を売り上げた際、得意先から商品代金200円とそれに対する消費税20円をもらう。この20円が預かった消費税です。
③ 預かった消費税20円―支払った消費税10円=納める消費税10円となりますが、免税事業者は納税義務がないので、納める税金10円は税務署に納めません。
これは、今までと同じ!!
ケース4;免税事業者が免税事業者から商品を仕入れて販売する法人又は個人の場合】
・商品を税込110円で仕入れ、税込220円で売ったとき
① 商品を仕入れた際、仕入業者に対し、商品代金100円とそれに対する消費税10円を支払う。この消費税10円が支払った消費税です。
② 商品を売り上げた際、得意先から商品代金200円とそれに対する消費税20円をもらう。この20円が預かった消費税です。
③ 預かった消費税20円―支払った消費税0円=納める消費税20円となりますが、免税事業者は納税義務がないので、納める税金10円は税務署に納めません。
これは、今までと同じ!!
消費税のインボイス制度の懸念点
消費税のインボイス制度が始まると懸念されるケースは、消費税のインボイス制度の概要で記載したケースのうち、ケース2、3及び4です。
ケース2の場合、課税事業者は免税事業者に支払った消費税を引いてダメになるため、免税事業者に対し消費税分を払わないと言ったり、また、免税事業者とは取引しないと言われることなどが懸念される。
ケース3の場合、免税事業者は、前述のように消費税を支払わないと言われた場合、預かる消費税は0となるが、課税事業者から仕入れた場合、支払った消費税は10となる。この支払った消費税は、申告すれば税務署から戻してもらえるので問題ないが、免税事業者は、納税義務がないため戻してもらえない。その結果、手元資金が10円減る。
ケース4の場合、前述のように課税事業者から消費税を支払わないと言われれば、預かった消費税が0となる。一方、仕入れ先である免税事業者に消費税を払わないと言えば、支払った消費税も0となるため問題はないが、支払わないと言わない場合、その支払った消費税分10円だけ手元資金は減る。
まとめ
消費税のインボイス制度の導入は、今までの消費税の制度の問題点を解決する方法であり、また、極めて理にかなった制度であると言えるが、良く言われる勉強と実務は違うんだ!!と言いたくなるような悩ましい問題が生ずる可能性があると思われます。取引先との関係性などいろいろなしがらみの中で、今後どのように対応していくのかを自社の取引形態や取引先との関係性を踏まえ、この2年間の間にどうしていくのかを考える必要があるのではないでしょうか。
私は、この点について、お客さんに十分説明をし、理解していただき、もっとも適切な判断をして頂けるよう努めたいと思います。
なお、次回からは、このインボイス制度の具体的な規定や手続又は今回記載した懸念事項以外のケース並びに対応策などを何回かに分けて記載する予定です。
2021,09.03
消費税適格請求書等保存制度(インボイス制度)(その1)
こんにちは!!山形市で税理士をしている菖蒲です。
今回は、消費税の適格請求書等保存制度(インボイス制度)についてです。この制度は、2023年(令和5年)10月1日から開始されます。あと2年後からのスタートですが、いろいろ悩ましい部分があるので、早めに対応しておいた方が良いと思います。
そこで今回から何回かに分けてインボイス制度のついて書きたいと思います。
まず今回は、余談から!!
日本の現在の消費税
日本の現行の消費税の仕組みは、預かった消費税から支払った消費税を差し引いた消費税を税務署に納めることとなっていますが、この支払った消費税については、帳簿及び請求書等保存方式と呼ばれる方式が採用されている。
この帳簿及び請求書等保存方式とは、一定の事項が記載されている帳簿及び請求書等を保存していれば、その消費税を引いて良いですって感じでしょうか!!だから、免税事業者に支払った消費税についても、その免税事業者から交付を受けた請求書等に一定の事項が記載されていれば、引いて良いですってことです。
消費税のインボイス制度
消費税のインボイス方式は、税務署長に申請をして登録を受けた課税事業者が交付する適格請求書(インボイス)の保存が課税仕入れの要件になります。つまり、登録を受けない免税事業者などからの課税仕入れについては、仕入れ税額控除ができない。
消費税の仕組み
消費税の仕組みについて、ちょっと確認!!
例えば、A社から税込110円の材料を仕入れ、B社に税込220円で販売し、B社はその材料でパンを製造し、このパンを税込330円でC社(スーパー等)に販売し、C社はお客さん(最終消費者)に税込440円で販売した場合
A社;預かった消費税20円-支払った消費税0円=納付する消費税20円
B社;預かった消費税30円-支払った消費税20円=納付する消費税10円
C社;預かった消費税40円-支払った消費税30円=納付する消費税10円
納付する消費税の合計は、40円(20円+10円+10円)となり、最終消費者に販売した税込440円に対する消費税40円が税務署に納付される。
これは、A社、B社、C社すべてが課税事業者の場合に成立つ!!
A社、B社、C社のいずれか1社でも免税事業者があれば、納付しないので、40円は税務署に納付されない!!
インボイス制度を採用する理由
消費税の仕組みで記載した通り、消費税の仕組みが成立するためには、すべての事業者が課税事業者である必要があり、1社でも免税事業者がいれば、成立しない。その結果、税務署に入る税収は減る!!これはダメ!!ということで、インボイス制度を採用すれば解消され、税収が増える!!だから・・・・採用!!
日本が帳簿及び請求書等保存方式を採用していた理由
なぜ、日本は今まで帳簿及び請求書等保存方式を採用していたのか??これは、ちょっと記憶が定かではないのですが(間違っていたらゴメンナサイ!!)、消費税を導入する際、国民からの批判を和らげるため、面倒で厳格なインボイス方式よりも、簡単な帳簿及び請求書等保存方式が採用したということでしょうか!!
まとめ
今回の改正は、免税事業者が課税事業者を選択することとより、税収を上げることが本来の目的なのでしょうか??理論的には正しい方向に進んだので、何の問題もありませんが、なぜ今更!!って感じですよね!!最初、導入しやすいように簡単な方法を採用し、今になって原則に戻すなんて!!
まあ仕方ないですね!!
次回は、インボイス制度の概要を記載したいと思います。
2021.08.31
電子帳簿保存法(その3)
こんにちは!!山形市で税理士をしている菖蒲です。
今回は、前回の続き、令和3年税制改正で改正される電子帳簿保存法です。前回は、「電子データ保存」の改正点について書きましたが、今回は、「スキャナー保存」の改正点について書きたいと思います。また、導入するにあたっての私の私見も少し!!
現行制度の概要
「電子データの保存」については、前回も書きましたが、次の表のとおりです。
対象 | 具体例 | 保存方法 |
国税関係書類 | 見積書・契約書・請求書・領収書など相手が作成するもの | スキャナー保存 |
現行制度のイメージは次の通りです。
要 件
国税関係書類におけるスキャナ保存の要件としては、真実性の確保」と「可視性の確保」が求められます。スキャナ保存が認められている書類は、取引先から受け取った「紙」の国税関係書類です。これらの書類は、以下のように「重要書類」と「一般書類」に区分して要件が設定されています。(詳細は、前回のブログを見てください。)
○真実性の確保
1.入力期間の制限
2.解像度及び読み取り
3.タイムスタンプの付与
4.読み取り情報の保存
5.ヴァージョン管理
6.入力者等情報の確認
7.適正事務処理要件
○可視性の確保
1.帳簿との相互関係性の確保
2.見読可能装置の備付け等
3.システム開発関係書類等の備え付け
4.検索機能の確保
改正点
(1)要件の緩和
内容 | 改正前 | 改正後 |
税務署長の事前承認 | 必要 適用日の3月前までに申請書を提出し、事前に税務署長の承認が必要 | 廃止 ー |
タイムスタンプ要件 | ①受領者が自署が必須 ②3営業日以内のタイムスタンプ付与 | ①受領者の署名が不要 ②最長2ヶ月以内のタイムスタンプ付与 ③不正防止の策として電子データの修正・削除の履歴に残せるシステムであれば、タイムスタンプの付与に代えられる |
適正事務処理要件 | ①定期検査と相互けん制の適正事務処理要件の対応が必須 ②検査実施日まで原本の破棄が不可 ③2名以上での対応が必要 | ①適正事務処理要件が廃止 ②原本は、スキャナ後にすぐに破棄が可能 ③1名での対応が可能 |
(2)過少申告加算税の軽減
優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置があります。
一定の国税関係帳簿について優良な電子帳簿の要件を満たして電磁的記録による備付け及び保存を行い、本措置の適用を受ける旨等を記載した届出書をあらかじめ所轄税務署長に提出している保存義務者について、その国税関係帳簿(優良な電子帳簿)に記録された事項に関し申告漏れがあった場合には、その申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減される措置が整備されました(申告漏れについて、隠蔽し、又は仮装された事実がある場合には、本措置の適用はありません。)。
(3)重加算税の加重
要件が緩和された反面、ペナルティーが用意されています。具体的には、電子データに記録された事項に関して隠蔽または仮装された事実に基づいて申告し、当該データの改ざんが把握された際は、通常課される重加算税の額に10%が加重される。つまり、40%(又は35%)+10%=50%(又は45%)が課されるので注意です。
まとめ
今回は、電子帳簿保存法のうち「スキャナー保存」について書きました。いかがでしょうか?これでも複雑ですよね!!これは、業務フローを整理し、導入可能かどうかを判断する必要があると思います。ただ、「電子データ保存」に比べれば、ハードルが対価ですかね??最近は、証憑をスキャナーで保存し、AIで仕訳伝票を自動で入力できるシステムも出ているので、導入しやすくなっているのかもしれませんが・・慎重に検討ください。その際、顧問税理士等に相談頂いたほうがいいと思います。また、数年後に実施される消費税のインボイス方式により、保存すべき帳簿についても影響を受ける可能性があるため、その部分についても問税理士等に相談頂いたほうがいいと思います。
3回にわたり電子帳簿保存法の改正について書きましたが、十分に書ききれなかった部分やもしかすると勘違いしている部分があるかもしれませんのでご容赦ください。ただ、今後は、電子での保存が増えてくるかもしれません。親身になって対応してくれる税理士等に相談してみてください。
次回は、消費税のインボイス方式について書きたいと思います。
2021.08.28
電子帳簿保存法(その2)
こんにちは!!山形市で開業税理士をしている菖蒲です。
今回は、前回の続き、令和3年税制改正で改正される電子帳簿保存法です。前回は、現行制度の概要を書きましたが、今回は、「電子データ保存」の改正点について書きたいと思います。また、導入するにあたっての私の私見も少し!!
現行制度の概要
「電子データの保存」については、前回も書きましたが、次の表のとおりです。
対象 | 具体例 | 保存方法 |
国税関係帳簿 | 仕訳帳・総勘定元帳・その他の帳簿等 | 電子データ保存 |
国税関係書類 | 貸借対照表・損益計算書その他 | 電子データ保存 |
見積書・契約書・請求書・領収書など自己が作成するもの | 電子データ保存 | |
電子取引 | 電子メール取引・インターネット取引・クラウド取引等 | 電子データ保存 |
現行制度のイメージは次の通りです。
要 件
(1)国税関係帳簿・国税関係書類における電子データ保存の要件
○真実性の確保
○可視性の確保
(2)電⼦取引の取引情報に係る電子データ保存の要件
①システムの概要、説明書など関係書類の備付け
②見読性の確保
③検索機能の確保
④次の措置を行うこと(いずれか)
イ、タイムスタンプが付された後の授受(発⾏側のタイムスタンプの付与)
ロ、授受後遅滞なくタイムスタンプを付す(受取側のタイムスタンプの付与)
ハ、データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステムまたは訂正削除ができないシステムを利⽤する
ニ、訂正削除の防⽌に関する事務処理規程の備え付け・運用
改正点
(1)要件の緩和
内容 | 改正前 | 改正後 |
税務署長の事前承認 | 必要 ①適用日の3月前までに申請書を提出し、事前に税務署長の承認が必要 | 廃止 ー |
検索要件の緩和 | ①取引年月日、勘定科目、取引金額やその帳簿の種類に応じた主要な記録項目を検索条件として設定できることが必須 ②日付や金額に係る記録項目に関しては、その範囲を指定して条件を設定すること必要 ③2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することが必要 | ①年月日・金額・取引先のみなど簡略化。 ②一定の場合には、2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定不要 |
(2) 過少申告加算税の軽減
優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置があります。
一定の国税関係帳簿について優良な電子帳簿の要件を満たして電磁的記録による備付け及び保存を行い、本措置の適用を受ける旨等を記載した届出書をあらかじめ所轄税務署長に提出している保存義務者について、その国税関係帳簿(優良な電子帳簿)に記録された事項に関し申告漏れがあった場合には、その申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減される措置が整備されました(申告漏れについて、隠蔽し、又は仮装された事実がある場合には、本措置の適用はありません。)。
(3) 重加算税の加重
要件が緩和された反面、ペナルティーが用意されています。具体的には、電子データに記録された事項に関して隠蔽または仮装された事実に基づいて申告し、当該データの改ざんが把握された際は、通常課される重加算税の額に10%が加重される。つまり、40%(又は35%)+10%=50%(又は45%)が課されるので注意です。
まとめ
今回は、電子帳簿保存法のうち「電子データ保存」について書きました。いかがでしょうか?これでも複雑ですよね!!でも、この「電子データの保存」のうち「(国税関係帳簿・国税関係書類における電子データ保存)については、できるかどうかは、まず、システムが対応しているかどうかにかかっているので、システム会社に確認していただくのが1かと思います。こちらは、比較的容易にできると思われます。一方、「電⼦取引の取引情報に係る電子データ保存」については、まずは、業務フローを整理し、導入可能かどうかを判断する必要があると思います。その際、顧問税理士等に相談頂いたほうがいいと思います。また、数年後に実施される消費税のインボイス方式により、保存すべき帳簿についても影響を受ける可能性があるため、その部分についても問税理士等に相談頂いたほうがいいと思います。
次回は、「スキャナー保存」の改正点について記載します。
2021.08.26
電子帳簿保存法(その1)
こんにちは!!山形市で開業税理士をしている菖蒲です。
今回は、令和3年税制改正で改正されました電子帳簿保存法です。これまでの電子データ保存の制度が大幅に緩和されます。
事業をしている人は、誰しも頭を悩ませるのが、領収書、請求書、総勘定元帳などの会計書類の保存。原則として紙での保存であり、保存期間は、法律により原則として10年又は7年等と規定しています。その大量の書類を長期間保存しなければならず、置き場所がない!!などの声が多くありました。そんな中、1998年(平成10年)に電子帳簿保存法が成立しました。これにより書類や帳簿などを電子データで保存することが容認されました。ただ、実際はそんなに使われていなく、その理由の一つが、制度の複雑さ及び煩雑さでした。適正公平な課税を確保しつつ納税者等の帳簿保存に係る負担軽減を図る等の観点から複雑かつ煩雑になったのだと思います。それでも何度改正が行われましたが、現在までにそれほど普及していないのが現状です。しかし、近年、政府がデジタル化を強く推進していることなどから、令和3年度税制改正でさらなる改正が行われ、2022年4月1日より施行されることとなりました。現在の新型コロナもさらに後押ししたものと思われます。
現行制度の概要
電子帳簿保存法については、次の3つの制度から構成されています。
(1)電子帳簿等保存制度
(2)スキャナー保存制度
(3)電子取引に係るデータ保存制度
保存ができる書類
(1)国税関係帳簿(仕訳帳・総勘定元帳。その他の帳簿等の電子計算機(会計システムなど)を使用して作成した電子データ)
(2)国税関係書類
①貸借対照表・損益計算書その他の電子計算機(会計システムなど)を使用して作成した電子データ
②見積書・契約書・請求書・領収書など自己が作成するもの
③見積書・契約書・請求書・領収書など相手が作成するもの
(3)電子取引(電子メール取引・インターネット取引・クラウド取引等)
保存方法
保存方法は、次の2つに分けられます。
(1)帳簿書類などを、自己(自社)が最初の記録段階から一貫して電子計算機(会計システムなど)を使用して作成した場合の保存方法(電子データ保存)
(2)既存の紙媒体の証憑類などをスキャンして読み取る保存方法です(スキャナー保存)
保存できる書類と保存方法の組み合わせ
対象 | 具体例 | 保存方法 |
国税関係帳簿 | 仕訳帳・総勘定元帳・その他の帳簿等 | 電子データ保存 |
国税関係書類 | 貸借対照表・損益計算書その他 | 電子データ保存 |
見積書・契約書・請求書・領収書など自己が作成するもの | 電子データ保存 | |
見積書・契約書・請求書・領収書など相手が作成するもの | スキャナー保存 | |
電子取引 | 電子メール取引・インターネット取引・クラウド取引等 | 電子データ保存 |
要 件
(1) 国税関係帳簿・国税関係書類における電子データ保存の要件
国税関係の帳簿や書類を電子データで保存する場合、その記録が本物であると確認できる「真実性の確保」と、誰もが視認できる「可視性の確保」が求められます。
○真実性の確保
参考:国税庁|電子帳簿保存法上の電子データの保存要件
(2)国税関係書類におけるスキャナ保存の要件
この場合も、上記(1)と同様、真実性の確保」と「可視性の確保」が求められます。
スキャナ保存が認められている書類は、取引先から受け取った「紙」の国税関係書類です。これらの書類は、以下のように「重要書類」と「一般書類」に区分して要件が設定されています。
①重要書類:契約書、領収書、請求書、納品書など、資金や物の流れに直結・連動する書類
②一般書類:⾒積書、注文書、研修所など、資金や物の流れに直結・連動しない書類
該当する区分の要件を確認してください。
○真実性の確保
○可視性の確保
手 続
①所轄の税務署長の事前承認
②申請には、電子データ保存・スキャナ保存それぞれに専用の「承認申請書」があり、使⽤する会計システムの概要を記載した書類や会計システム導⼊に関する事務⼿続き概要が分かる書類(適正事務処理規定など)または処理委託契約書、その他参考書類などを添付
③申請期限は、帳簿の場合は備付けを開始する日、書類はデータ保存を開始する日の3か月前
メリット
(1)書類の管理がしやすくなる
(2)収納スペースの問題が解決する
(3)データ検索の効率が良くなる
(4)上手く活用できれば、業務の効率化につながる
(5)ペーパーレス化の実現
(6)消耗品の節約
等など
デメリット
(1)現在の仕組みを大幅に見直す必要が生じれば、かえって不効率となる。
(2)場合によっては初期投資が必要になる
(3)システム障害や、脆弱なセキュリティによる情報漏洩のリスク
(4)停電などの電力が使えない状況になった場合には、どうしようもない
(5)サイバー攻撃のリスク
まとめ
今回は、改正点を書く前に現状の制度について記載しました。どうでしょう?複雑ですし、良くわからないと思いませんか?
今回の改正により、複雑さなどは多少緩和されますが、導入するためには、現在の業務フローの整理とシステム会社・顧問税理士等からのアドバイスが不可欠だと思います。あるシステム会社では、現行の電子帳簿保存があまりにも進まなかったため、開発をやめたという話を聞きましたし、会計事務所も積極的に対応していなかったという事実があるのかもしれません。
次回は、改正点について記載したと思います。
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